Producer Team Member

Business Renovation Producer

Yukio
Saito
齋藤 由紀夫

Business Renovation Producer 齋藤 由紀夫

小規模×赤字でも対応。資金調達(私募債・増資等)のアレンジが得意なM&Aプロデューサー

株式会社つながりバンク代表、経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士。日本外部承継診断協会 顧問、オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

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chapter01中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A

M&A業務自体は、会社員時代から関わっていました。比較的大きな案件ばかりでした。でも、資本の理論というか、あまり性に合わない案件ばかりこなしていたような気がします…。粛々と進められたのですね。

その後、どうしても中小企業を支援したくて独立しました。当時のメインは事業再生です。でも事業再生って、必然的にスポンサーを探さないといけない。すると、これまたM&Aの業務を行うことになり、ひとつM&Aの話をまとめると、どんどん依頼が入るようになって…。小規模の、しかも業績が芳しくない企業の譲渡案件を複数手がけたとき、当時のМ&A業界の知り合い達から、なかなかサポートを受けにくかったんです。「売上数千万円の案件なんだけど」と相談すると「お手伝いするのは難しいかなあ」って。というのも、彼らが普段手がけているのは大規模のM&A。どうせ同じような手間がかかるのですから、より大きな報酬が見込める大規模な案件、手離れのいい案件、財務内容がいい案件を手がけたがるのは当然なのですが。

近い部分もありますが、まったく同じわけではありません。やり方も進め方も、違う部分はあります。だから私も独立当初は試行錯誤の連続でしたよ。でも中小企業を支援するのが私の方針ですから。独立から7~8年の間に、約70~80件の案件に関与することができました。

たしかに勤め人時代にはありえない数字です。でも私、経験を積みたかったんです。だから報酬が少なくても、ときには契約書がないままに、当時は「断らない」をモットーで行っていました。ここ最近は、セミナー受講者の後方支援や、同業者サポート等も行っているので関与件数はぐっと増えましたね。最初は今ほど慣れてなかったので、非効率でした。どこに自分のフィーを乗せていいのかもわかりませんでした。「仲介」という制度も知らなかったんですよ。仲介は、買い手と売り手の両方から報酬をいただける立場です。私、ずっと投資する側にいたので、ずっと真面目に、片側からだけ報酬をいただいていたんです。ただ、件数をこなさないことには効率化もできませんし、ノウハウも蓄積されません。続けるうちに「成就する案件/しない案件/誰かにお願いする案件」などが見分けられるようになりました。独立当初に取り組んでいた事業再生も、今は自分で行っていません。再生に関しては専門家の方々にご紹介して「綺麗な会社に磨き上げてもらってから戻してもらう」みたいなやり方に変わってきました。

でも自分1人のチカラは、この大きな市場にとってまったく足りない。新しく協力者を探すうち、中小企業診断士の方々とのやりとりが増えてきました。そこで気づいたんですが、多くの中小企業診断士って、報酬がたとえリーズナブルでも、きわめて真摯に、中小企業を支援し、貢献なさっていますよね。こんな方々にこそスモールM&Aのノウハウをお伝えしたいと思ったのが、私が講師を始めたきっかけです。

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chapter02成長を待つM&A

M&Aと聞くとみなさん「儲かっている会社のM&A」と思いがちでしょうけれど、日本の中小企業に視点を移すとかならずしもそうじゃない。「あまりうまくいっていない企業」「今ちょっと弱っている企業」が対象になることも多々ある。しかもスモールM&Aの実務は、多くのコンサルタントがまだ手をつけていない分野です。

8年経ち独立初期と比べて、おかげさまで時間的なゆとりができました。たとえば「ここを解決してからM&Aしたほうが有利に売れます、3年くらいかかるので、3年後に戻ってきてください」と。そんな「成長待ち」案件をたくさん持てるようになりました。

社長カラーが強すぎる会社って売れにくいんですよ。「これからの1~2年でナンバー2の方に権限移譲して、業務を仕組み化してください。仕組み化が難しいようなら、僕の知り合いのコンサルタントを紹介します、料金はリーズナブルに頼んでおきますよ」と提案することもあります。もちろん提携コンサルタントに任せきりじゃなく、僕も定期的にチェックしている会社もたくさんありますよ。よくみなさん戻ってきてくださいますよ。長年やっていると、そういうことも見えてきます。

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chapter03失敗から何を得るかが大切である。

失敗なんて、いっぱいありますよ。お恥ずかしい話ですが、事業譲渡の際に、過少に申告された経費を見抜くことができず、買い手に迷惑をかけてしまったり。次々と案件が決まり、油断していた時期でした。別事業に計上されていた広告費、本部で負担していた経費などを、私は見抜けませんでした。…というか、そう簡単には見抜けませんよ、そんなの。嘘をつく人とはそもそも付き合わないのがいちばんの回避法ですが…。

このときの私の反省としては、まず経営者との信用関係を築くところから始めないといけませんでした。「依頼します」「はい、わかりました」ではなく。このときデューデリ(デューデリジェンス=ざっくり言えば会社の評価)まで深く踏み込んだのですが、過少申告経費は総勘定元帳等をじっくり見て調べるなどで避けられたことです。アドバイザーとして見なくちゃいけないところを、私、油断してしまいました。収めるのに2年かかりました。

トラブルは起きるんですよ、M&Aは。しかし、逃げると絶対に問題になる。あのとき僕が逃げていたら、訴えられたかもしれないですね。「あなたには瑕疵がある、責任がある」って。でも僕、絶対逃げないですよ。

逃げない方がアドバイザーのレベルも上がるんです。このケースでは、経営を改善するためのプランを一緒に考え、次の譲渡先を探すことで落ち着きました。

おかげでチカラがついたのと同時に、信用も高まりました。というのも、このお客さんから、次の案件をお願いされたんですよ。責任を持って仕事をまっとうしてくれたからと言ってくださって。

チャンスだと思って、逃げない方がいいですね。あとは、М&Aではないけれど、経歴も事業も信用調査も問題ない先を気軽に金融機関に紹介したところ、ほぼ詐欺のような会社で…。結果として自分の信用を失うとこになったこともあります。

また、独立間もない頃のМ&A案件で、譲渡後に簿外債務が発覚したこともありました。売手と、そのアドバイザーが結託した売り逃げ案件でした。結果として司法の場で争うことになってしまった…。最初の頃の話ですよ。でもこの案件を手がけたおかげで、株式譲渡ではなく、事業譲渡や会社分割という手法を習得し、選択肢の幅が広がりました。何ごとも経験です。